「データで読む家族問題」より(NHKBooks) |
「家族」は・・・誰にとっても、人生の最大のテーマのひとつでしょう。
3.11以来、その傾向はますます高まっています。
そこで、5回シリーズで「家族:高齢期に焦点を当てて」をお送りします。
リタイヤ後の家族:第1回
《高齢者の気概と自立》
白髪の夫婦と若いカップルが、明るい日差しがさすリビングルームで、
楽しそうに話し合っている。
そこに「やあ元気?」と青年が入ってくる。
壁に掛けてある写真を見て「これ、おまえの小学校の頃だね」
と妹らしき女性に声を掛けた。
「そう、あの頃は・・・」と話しが盛り上がる。
ピンポン!チャイムが鳴ってスーツ姿の男性が入ってくる。
予定表らしき用紙をもった彼は「そろそろ時間です」。
「あ、そうか」と彼らは立ち上がり「じゃ皆元気で、また来年」と互いにあいさつを交わし、部屋を出てそれぞれに分かれて行く・・・
そこは、彼らのために用意されたレンタル家族部屋だったのです。
これは「未来の家族」というテレビ番組でみた一場面です。
このような「家庭のない家族」はすでに現実化し、今や家族の形態は極めて多様化しています。
近年の日本は、高齢化・熟年離婚の増加・少子化・晩婚化・非婚化など家族に関する課題が山積しています。
特に「高齢期家族」にとって、伝統的に多数派だった「子どもとの同居世帯」の割合は急激に減少し、「夫婦のみ」や「ひとり暮らし」の高齢者世帯が年々増加しています。
これから私たちは、安心して自分をさらけ出し受け入れあえる場としての「家庭」を、創造的に構築していくことが求められているのです。
これまでの日本の社会システムは「人生50年」を前提に設計され、企業共同体や家族共同体の中に多くの人が自分を埋没させてきました。
しかし今や「人生100歳時代」を迎え、社会のあらゆる仕組みに変革が求められています。
そこで、自分の人生のテーマをもう一度想い起こし、今の時代を、新たな人生の物語をつくるチャンスととらえたいものです。
もうひとつ高齢期に大切なことは「関係」です。
それは年々希薄になるので、夫婦や親子や親族の関係以外に、今まで以上に他者との関係づくりに積極的になるべきだと思います。
高齢期を血縁関係者のみに頼らず、血縁以外で家族ともいえる親しい仲間を増やしていくことが肝要です。
これからの高齢者に求められることは、自分のライフスタイルは自ら築いていくという「気概」と、依存や甘えから脱却した「自立」が求められるのです。
「こういうわけで、あなたがたは、もはや他国人でも寄留者でもなく、今は聖徒たちと同じ国民であり、神の家族なのです」(エペソ 2:19)