2017年8月30日水曜日

ライフデザイン:放蕩娘の帰還

「放蕩息子の帰還」
という聖書の物語があります
(イエスキリストが話したたとえ話です)
ルカの福音書15章11〜32節


私の知り合いのO牧師の体験をご紹介します
テーマは
「放蕩娘の帰還」
です。

レンブラント作
「放蕩息子の帰還」


今から十数年前。ある夜のこと。
中学生だった長女が私のところに来た。
「お父さん、お話があります」。
「ん? どうした、そんなに改まって…」。
「実は…私が受けた洗礼、取り消してほしいんです」。
 呆気にとられ、絶句する私に、彼女は涙ながらに訴えた。
小学校5年生の時に、「どうしても洗礼を受けたい!」
と申し出たのは、彼女のほうだった。

しかし、
中学進学以来、
もし、牧師の娘に生まれなかったら、
違う人生だったのではないかと考え始めたという。
そして、
悩みに悩んだ末の、この告白だったわけだ。


 もちろん、
洗礼の取り消しなど聞いたこともない。
しかし、
彼女の決意は硬かった。
こうして、彼女は教会を離れたのである。


 それから数年後のこと。
高校卒業後、
フリー・アルバイターをしていた彼女は、
再び、私のところに来た。
「お父さん、お話があります。
デザインの勉強に、ニューヨークに留学したいんです。
費用を出してもらえますか?」。
「…ニューヨーク?」。


またもや絶句である。
しかし、よく話を聞くと、しっかりと考えている。
すでに、留学の仲介業者に行き、
手続き方法などを周到に調べている。
全体額の見積もり書まで資料として出してきた。


けれども、我が家にはそんな余裕などない。
下には、まだ弟と妹が控えている。
しかし、
彼女の夢もかなえてあげたい。
それに、これはチャンスかもしれない…。

そこで、
留学費用を出す条件の筆頭に、
現地の教会に通うことを挙げたのだ。
背に腹は代えられない。
彼女はこの条件を呑んだのである。


 こうして、201310月。
留学生活スタート。
彼女は約束を守り、教会に通い始めたのだが、
神さまは最善をなさる方! 
最寄りだからと選んだのは、
なんと、ゴスペルで世界的に有名な、
ブルックリン・タバナクル・チャーチだったのである。


 毎週の礼拝で歌われる、
圧倒的なゴスペルは彼女の魂を揺さぶった。
そして、
だんだん英語がわかるようになってくると、
ジム・シンバラ牧師の、
流行のムーブメントには流されない、
筋の通ったメッセージが、
彼女の心に沁み込んでいった。


 その頃から、
スカイプで、
「ねえ、聞いて、聞いて、
今日の礼拝で、ジムちゃんがこんなこと言っていたよ!」
と報告してくれるようになった。
これはうれしい! 
まさか、
再び彼女と信仰の話、聖書の話をすることができるようになるとは
思いもしなかったからだ。


 そして、この夏。
卒業を控えた娘は一時帰国。
729日に結婚式を挙げたのである。
相手は、私もよく知っているハーフの男性。
NYでことばの壁に悩み、
膨大な課題に押しつぶされそうな時に
支えてくれたのがきっかけだという。

 M先生の司式による結婚式は
厳かもあり、なごやかでもあり
祝福にあふれたものだった。
私は、
娘と腕を組んでヴァージンロードを歩いたが、
まさに、
父親冥利、牧師冥利に尽きる1日だった。

 こうして、放蕩娘は帰還したのである。






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